最近は、事実婚ということをよく耳にするようになってきました。
事実婚は婚姻届が必要ないため、実際に事実婚を選ぶカップル数の正確なデータはありません。
しかし、だんだん世の中においても事実婚は知られてきており、法律の一部では普通の法律婚と同じような義務や権利を持つようになっています。
今回は、バツイチ男性の恋愛の形の一つとして、事実婚について解説します。
事実婚の定義
事実婚というのは、婚姻届を法律に基づいて出さないで、結婚生活を送っている状態を指します。
大辞林では、以下のように定義されています。
じじつこん【事実婚】
法律上の婚姻をしていないが、社会的に夫婦と同一の生活を送っていること。特に、婚姻の意思がない点で内縁と区別して使用される。
引用元:大辞林 第三版
事実婚の場合は、お互いに一般の夫婦と同じような同居、生活費の分担や扶助の義務などの責任があります。
事実婚と認められるためには、夫婦であるという考えがお互いある、お互いが一緒に住んで生計が同じであることが必要です。
事実婚と同棲の違い
事実婚と同棲は、似ているようで異なります。
同じ家に一緒に住んでいたとしても、結婚の意思がなかったり、生計を同一にしていない場合は、事実婚とは見なされないケースが多いです。
しかし、特別な事情があって「同じ生計であるが住んでいるところが違う」というような場合は、例外的にその状況で事実婚が認められることもあります。
バツイチ男性が事実婚を選ぶ理由
バツイチ男性が事実婚を選ぶのは、いくつか理由があります。
- お互いの家族同士の付き合いを避けたい
- 夫婦別姓をとりたい
- 二度目の離婚を恐れている
まず、入籍をしないことで、嫁や婿というようなトラブルを避けたいという理由があります。
結婚した場合は、家族同士がお互いに身内になるため、嫁と姑のトラブルなども出てきます。
このようなトラブルを避けるために、バツイチ男性が事実婚を選ぶ場合があります。
事実婚であれば、全く結婚しているのと生活が同じようになりますが、入籍していないことで回避できるトラブルがあるのです。
また、夫婦別姓をとりたい場合に事実婚を選択するケースがあります。
それ以外にも、二度目の離婚をおそれており、正式に婚姻届をだすことに抵抗があるというバツイチ男性がいます。
事実婚の彼女の法律上の権利
事実婚の場合、彼女に認められる法律上の権利はどうなるのでしょうか。
事実婚の彼女は法定相続人にはなれない
事実婚の彼女は、法定相続人にはなれません。
相続対策をとらないと、事実婚の彼女には遺産を残してあげられないという事です。
親族の遺留分を考慮して遺言書を作成する
事実婚の場合、彼女に遺産を残すためには、遺言書を作成する必要があります。
しかし、夫の祖父母や父母がまだ生存しているうちは、遺言書を残した場合でも、彼女に相続させられるのは、遺産の3分の2までです。
親族と彼女間での相続トラブル
さらに、トラブルが法定相続人との間で起きる場合が多くあります。
遺留分が法定相続分にはあるため、遺留分をオーバーして、事実婚の彼女に相続させるということは認められません。
遺留分というのは、最低限の相続権として相続人に認められたものです。
生前贈与で相続させる方法もある
また、生前贈与などで、事実婚の彼女に相続させる方法もあります。
贈与税は、年間に110万円以内であれば課税されずに財産を譲れるので、早めに検討するといいでしょう。
事実婚でも扶養に入れる
社会保険の健康保険や年金というようなものでは、「夫婦として一緒に生活している」ということが重要視されます。
そのため、事実婚で一緒に結婚生活をしていることが分かると、家族として健康保険や年金において保障され、扶養に入ることもできます。
事実婚でも遺族年金は受給できる
事実婚をしている彼女は、遺族年金を受給することができます。
事実婚は単純に入籍していないというのみで、基本的には入籍している夫婦と同様の生活を送っているためです。
遺族年金を受給するための手続き書類は、世帯が同じ場合は普通の遺族年金を請求するための書類でOKです。
世帯は違っているが、住民票上で住所が同一になっている場合は、「第三者の証明書」と「別世帯となっていることについての理由書」が必要になります。
国民年金の第3号被保険者になれる
事実婚の彼女は第3号被保険者になれますが、いくつか条件があります。
国民年金の第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養される配偶者であるため、夫婦関係を証明する必要があります。
第3号被保険者は、子供や親の扶養の場合でも違うため、このような場合は保険料を毎月第1号被保険者として納めます。
一方、事実婚でも一定の条件を満たしていれば、第3号被保険者になれる場合があります。
事実婚では医療費控除は受けられない
入籍している場合は、年間の所得が38万円以内の場合は配偶者控除が受けられ、38万円~76万円未満の場合は配偶者特別控除が受けられます。
しかし、医療費控除の対象は、三親等内の姻族・六親等内の血族です。
税法においては、配偶者を民法上の関係に基づいて決めるため、事実婚の場合は医療費控除の対象になりません。
事実婚の彼女は、医療費控除の対象外なのです。
なお、配偶者控除も、入籍していない場合は対象外となります。
事実婚の手続き
事実婚では、お互いに「結婚している」と認めていても、法的な手続きを行ったり、社会的なサービスを受けたりする場合は、夫婦関係を証明することが必要です。
事実婚を証明する方法として一般的なのは、世帯変更届で住民票を異動し、公正証書を作成することです。
世帯変更届で住民票を異動する
事実婚にするためには、住民異動届が必要になります。世帯を同じして、妻(未届)あるいは夫(未届)と続柄を書くことによって、事実婚が証明でき、スムーズに公的手続きができます。
住民票で世帯が同じ場合
一緒に生活しており、住民登録を世帯が同じ住人として行っている場合は、同居人の続柄として住民票には書かれています。
世帯が同じ住民で同居人に続柄がなっている場合は、妻(世帯主)、夫(未届)あるいは夫(世帯主)、妻(未届)に世帯変更届の続柄を変えます。
住民票で世帯が異なる場合
一緒に生活しているが、違った世帯主、つまり世帯が別で住民登録を個別に行っている場合は、同居人が別にいなければ、住民票の続柄はそれぞれの人だけのものになっています。
世帯が違っている場合は、世帯を一緒にして同じ世帯員に二人をしながら、妻(世帯主)、夫(未届)あるいは夫(世帯主)、妻(未届)に続柄をします。
公正証書を作成する
事実婚についての公正証書を、公証役場で作成してもらいます。
公正証書というのは、法律のプロである公証人が作成した証書です。公正証書に遺言や契約をすれば、証明力が高くなります。
事実婚の場合、公正証書は必須ではありません。
しかし、二人で住宅ローンを組んだり、家族として手術など医療上の判断をする場合は、公正証書があることによって手続きがスムーズに進む場合があります。
事実婚を解消する方法
法律婚の解消する方法としては、共同生活を夫婦が行わなくなったことによって成り立ちます。
しかし、一方的に事実婚を解消しようとすると、内縁関係不当破棄となり慰謝料請求の対象となることがあります。
まとめ
事実婚は、婚姻届を法律に基づいて出さないが、実質的には結婚生活を送ることです。
バツイチ男性が再婚で事実婚を選択する際は、事実婚の彼女は法定相続人にはなれない、事実婚では医療費控除は受けられない、などの法律上の制限があることに注意してください。