日本では3組に1組が離婚すると言われており、昔と比べると離婚率が高いです。
それだけ離婚をする夫婦が多いのですから、離婚原因も多岐に渡っています。
今回は、離婚の原因において「有責者」となってしまった場合に発生してくるであろう慰謝料について、様々な角度から見ていきたいと思います。
慰謝料とは
離婚慰謝料とは、相手方の有責行為によってやむなく離婚に至ったケースにおいて、本来であれば感じえなかった精神的及び肉体的苦痛に対しての賠償のことです。
有責行為とは、離婚の原因となった配偶者の行為の事を指します。具体的には、不貞行為(不倫や浮気)、暴力行為(DV)、虐待、悪意の遺棄(夫婦間の義務の放棄)などが有責行為にあたります。
離婚原因の上位である性格の不一致や日常的な夫婦喧嘩などは、有責行為としては認められないケースの方が多いと言えるでしょう。
簡単に言えば、夫婦のどちらかが婚姻を継続し難い行為を行い離婚に至った場合に、被害を受けた側が有責行為を行った相手に対して請求するものが離婚慰謝料となります。
円満離婚(特に離婚に至る重大な理由もなく離婚)の場合は、慰謝料が発生しないケースもあります。
ケース別にみる慰謝料の相場
ここでは、離婚原因である有責行為の種類別に、慰謝料の相場を見ていきます。
不貞行為の場合
不貞行為(不倫、浮気)は、配偶者がいながらにして他人と肉体関係を結ぶ事を指します。
知らない方も多いかもしれませんが、有責行為として認められるか否かは、ほとんどが肉体関係の有無に左右されます。手をつないでデートをしたり、二人きりで食事をした等は、やられた側からすると浮気にあたるかもしれませんが、有責行為として認められる可能性は低いと言えます。
夫婦のどちらかが不貞行為を行い離婚に至った場合の慰謝料金額は、法律で定めがあるわけではないので計算して算出するものではありません。
不貞行為の期間(長ければ長いほど高額)や不貞行為の回数、そして不貞行為以外に離婚原因はなかったのかといった点や、夫婦に子供がいるのか(いた場合の方が高額)など、個別の事情によって大きく変化します。
また、下記のような事情によっても慰謝料の金額は増減します。
不貞行為があった後の話ですが、夫婦がそれを原因として別居するのか、同居を継続するのかです。夫婦は一般的に一つ屋根の下で暮らしていますから、不貞行為が原因でどちらかが家を出ていった場合は増額になる傾向が強いです。
逆に不貞行為を許して同居を継続する場合、金額は減額になる傾向にあります。
不貞行為が発覚する前の婚姻生活の状況も、慰謝料の金額計算において重要です。夫婦の共同生活が円満に進んでいた場合、当然金額は増加します。逆に不貞行為が発覚する前から不仲であり、離婚秒読みのような段階であった場合は減額となります。
また、婚姻期間の長さに比例するように、慰謝料の金額は上がる傾向にあります。
不貞行為の主導者(どちらか誘ったのか)が夫婦どちらかであったのか、それとも不貞相手(第三者)であったのかでも変化します。
このように不貞行為が原因で離婚に至った場合においても、様々な事情によって金額は大きく変わってきます。
今までの例を見てみると、おおよそ100万円~300万円におさまったケースが最も多く平均的です。
暴力行為(DV)、虐待の場合
次は、配偶者の家庭内暴力の被害によって離婚に至ったケースです。
こちらも不貞行為と同様に、状況や事情によって大きく変化します。
金額を左右するのは、DVによる怪我や障害の程度です。重傷になればなるほど高額となりますし、今後の社会復帰に影響を及ぼすなどの場合は増額されます。
他には、DVのあった期間、婚姻期間の長さ、子供の有無や人数、相手の年齢などが要素となります。
判例を見てみると10万円~300万円までとなっており、きちとんした証拠があり認められたケースではより高額に、逆に口頭だけでの訴えの場合は減額になる傾向にあります。
慰謝料相場
離婚慰謝料は、その状況や夫婦の事情によって大きく異なる事がわかりました。
不貞行為や暴力行為以外の有責行為においても同様です。認められる証拠が用意できていた場合はより高額に、証拠が少ないほど比例して少ない金額となっています。
慰謝料の減額について
有責行為をして離婚原因を作ってしまった場合、慰謝料の支払い対象となります。
ここでは不貞行為をして離婚至った場合を例にとり、慰謝料が減額されるケースについて見て行きたいと思います。
慰謝料金額は適正か
不貞行為をして離婚原因を作り慰謝料を請求された。当然の事と言えますが、請求された慰謝料ですぐに納得し、支払いをしてしまうと思わぬ損をする場合があります。
まずは、請求された金額を確認します。先ほど述べた通り、慰謝料には相場があります。相場はありますが、逆に上限がないのも確かです。
不貞行為をされて深く傷ついた相手は、高額な慰謝料を請求してくる場合があります。
請求された慰謝料が相場から大きくかけ離れていた場合、慰謝料を減額できる可能性が出てきます。
但しあくまでも慰謝料は当事者に有利な事情を根拠に基づいて主張を行い認められるものであります。
具体的な回数や内容が少ない
長いあいだ継続的に不貞関係もっていた場合は、当然高額な慰謝料となりますが、たった一度だけの関係であった場合や浮気・不倫の期間が著しく短い場合などは、慰謝料が減額される場合があります。
但し、これは証明をすることが比較的難しい事案でもある為、相手方や然るべき場所で誠実に説明し、認めてもらう必要があります。
収入や財産が少ない
潤沢な預金を持っている場合は別ですが、収入が少なく預金もないといった状況も十分に考えられます。
あなたに責任をとるつもりがあり、誠意をもってそれを伝える事で相手が減額に応じてくれる場合もあります。
但し、「資産や財産がない=支払いの必要なし」というわけではないので注意が必要です。
心から反省し誠意をもって謝罪した
不貞行為を行った人の中には、開き直って謝るそぶりもみせない人がいます。
このように反省がみられない場合に減額は難しいですが、不貞行為を心から反省し、真摯に誠意をもって謝罪をすれば相手の気持ちも少しは和らぎ、減額に応じてもらえる可能性があります。
慰謝料の減額は、相手の同意が必要不可欠です。支払いの意志がある事を示し、誠実に対応する事が何よりも肝要だと言えます。
慰謝料が払えなくなったら
途中までは順調に慰謝料を支払っていたけれど、突然病気になってしまう事や、転職して年収が大幅に下がってしまうことなど暮らしの中での変化は予測できません。
ここでは、慰謝料が払えない、払えなくなった場合について見ていきたいと思います。
慰謝料が払えない場合
まずは、請求された慰謝料の支払いが最初から困難な場合についてお話します。
100万円の慰謝料を請求されたが、貯金は10万円しかない場合、当然に支払う事ができません。
そのような場合はいくつかの方法がありますが、まずは借りてでも支払う事を検討します。
親や兄弟、親戚に事情を話して助けてもらう事もできますし、クレジットカードや消費者金融も方法の1つです。
不貞行為を例にとった場合、慰謝料の支払いは一括払いが原則とされています。借りて払うとなると少々抵抗がありますが、そこまでしてでも支払いが優先されるものが慰謝料です。
もちろん借りたいけれどもどこからも借りられない人もいると思います。その場合は、分割払いのお願いを検討します。
先ほど慰謝料の支払いは一括払いが原則とお話しましたが、慰謝料の請求者が認めてくれれば分割払いでの支払いも可能になります。
請求者としては、最終的に全額を支払ってもらえればよいと考え、分割払いを認めれくれるケースが多いです。
ここでは高圧的な態度をとらず、支払いの意志がしっかりある事と、謝罪の気持ちを相手に伝える事が重要です。
最後に分割払いでも、日々の生活がギリギリで慰謝料を支払えないというケースです。
ですが、それであれば仕方ない、支払わなくていいよとはなりません。
まず最初に、今までの生活レベルを維持する事をあきらめます。自分の生活を見つめなおし、さらに切り詰める、また仕事を掛け持ちするなどして何とか費用を捻出します。
正社員であれば副業を認めてくれる事も少ないでしょうから転職までも検討しなければなりません。睡眠時間や余暇を見直し、何とか収入を増やす手段を考えた方が良いでしょう。冷たいようですが、自分が行った行為によって相手に損害や精神的、肉体的苦痛を与えたうえで賠償ができないのですから、支払いが完了するまでは今までの生活を維持する事ができないのは当然の事といえます。
慰謝料が払えなくなった
続いて、分割払いに応じてもらい、月々〇〇円といったように継続的に支払いを行っていたものの、何等かの事情で途中から支払いが困難になったケースを見ていきます。
この場合、まずは借りられないかを検討します。また借りる事が難しい場合は、相手方に事情を説明したうえで支払月額の減額に応じてもらえないかどうかを検討してもらいます。
今まで誠意をもって支払いを継続し積み重ねてきた信用があるため、誠意をもって伝えれば相手方も事情をくんで応じてくれる可能性が高いです。
まとめ
今回は慰謝料について様々な角度から見てきました。有責行為をし、慰謝料の支払い者になってしまった場合に一番大切な事は誠意です。
自分の非を認め、誠実に対応する事で相手の怒りも少しは静まり、話し合いに応じてくれる可能性があります。
困難な道かもしれませんが、新しい人生のスタートのつもりで気持ちを整理し、真摯な対応をしてください。